2013年06月08日

学習麻痺の恐ろしさ(2)数学編 その1

Vol.7
学習麻痺の恐ろしさ
〜絶対に幸せになれない子供達〜
(2)数学編 その1


「学校の勉強で数学が一番嫌いだった!」という方、多いと思いますが、今回はその算数・数学のお話です。まずは、根本に立ち返って考えてみましょう。

⒈数学はなぜ必要なのか?

東海大学教育開発研究所教授の秋山仁先生は、2005年度NHK高校講座の「数字基礎」の講師をなさっていました。そのテキスト中にとてもわかりやすく、数学について簡潔にまとまった文章がありましたので、ご紹介いたします…。

「数学って,本当に,世の中で役に立っているんだろうか」。数学を学んでいて,このようなことを感じたことはありませんか。たしかに,方程式や公式が活用されている場面を具体的に目にする機会はあまりありません。そのために,「数学は世の中で役に立つことはない」という誤解が生じているようです。しかし,ふだん目にする多くのものの中に,実は数学の理論が潜んでいるのです。

たとえば,衛星放送を受信するパラボラアンテナの形は,放物線のもつ性質が利用されています。
携帯電話などの通信のシステムや,インターネット上での情報の安全性の確保,惑星探査機からの画像情報の乱れの修正など,電子通信の分野でも数学の理論は大いに使われています。その結果,大量の情報を安全かつ正確にやりとりできるのです。

また,病気になれば体温を測りますが,電子体温計を使えば,水銀の体温計よりも短時間で体温を測れます。電子体温計では,温度の上昇のしかたを数学的に分析して,最終的に何度まで上がるかを予測してその値を表示しているのです。頭をけがしたときには,CTスキャンで脳の内部の画像を映し出します。
実際に頭部を切らなくても脳の検査ができるのは,数学的な処理によって画像を映し出せるからなのです。

買い物に行けば,商品のバーコードがレジで瞬時に読み取られるので,会計がスムースに行われます。同時に,レジとつながっている回線を通して,どんな商品が売れているのかをお店は管理することができます。バーコードには読み取りの間違いを防ぐための簡単な数学的な仕組みが取り入れられています。

みなさんが社会に出れば,クレジットカードを使って支払いをすることもあるでしょう。株価などさまざまな経済の動向に関心をもつこともあるでしょう。数学はこういった場面でも大活躍しているのです。


いかがでしょうか?私たちが学校の数学で学ぶのは、現代のテクノロジーの基礎の基礎です。ですから、一見「社会では使われていないのでは?」「何の役にも立たないのでは?」と、思ってしまいがちです。しかし、この「基礎の基礎」というところがミソです。

学校の現場で「今、学んでいる数学が世の中でどう役に立っているのか?」という疑問に答えてくれたり、教えてくれる授業がどれだけあるでしょうか?たとえば、一次関数、平方根など。これらを何のために学び、どう世の中の役に立っているのかを、生徒に話すと、みな口を揃えて「筒井先生が初めてこのことを教えてくれた。」と言います。

それらの詳しい内容はまたの機会に語るとして…。2011年に「中学・高校数学のほんとうの使い道」という本を出版された京極一樹さんは、その著書の中でこんな事を書いています。

最近の数学の教科書を見て驚きました。学習参考書とほとんど変わりがありません。問題があって解法があるだけの内容では、楽しくないのが当然でしょう。問題を解くのが数学ではないはずです。それぞれの数学の登場の背景にこそ意義があります。(中略)それぞれの数学の何が面白いのか、それらが「どこでどのように使われているのか」を解説します。

いかがでしょうか?私も昨今の中高生の教科書を見せてもらって、同じ事を感じました。数学は問題を解くためだけに存在するものではない。と私も思います。授業でも、教科書でも、数学が何の役に立つのか誰も教えてくれない…。なのに、点数だけは要求される。これでは数学が嫌いな生徒が増えても何の不思議もありません。

「中2の終わりまでに、約半数が数学から脱落する」という説がありますが、現状では無理もない話です。それは「数学の楽しさ」を教えてもらう、授けてもらうチャンスをほとんどの生徒は与えられていません。前出の京極さんは、以下のようにも書いていらっしゃいます。

小生は数学と物理を専攻し、研究者になるために数学を勉強しました。そして数学が大好きでした。特に高校生のころは数学はほとんど「ゲーム」でした。使えるツールは何か、その範囲内でこの問題をどう解くことができるのか、これを考えるのが至上の喜びでした。

この「至上の喜び」という感覚、よくわかります。私も中学まではそうでしたから(笑)この「ゲーム」のような楽しみをどうしたら味わえるのか?続きは次号で…。

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Posted by 筒井 和之 at 21:26│Comments(0)学習麻痺数学の学習
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